「お前の望むままに。」 ファントムはそう言って小さく笑った。 |
望むままに。
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「チェスをしない?」 とある夜。 食事を終えた後の緩んだ時間に、クリスティーヌはファントムを誘った。手には既にチェスの駒と盤を抱えている。 「ねぇ、一つ賭けをしましょ。」 クリスティーヌもポーンを動かしながら、悪戯を思いついた子供の瞳でファントムを見上げた。 「賭け?」 また一つ駒を動かしてファントム。 「そう。負けたほうが勝ったほうの言うことを一つだけ聞くの。なんでもよ?」 楽しそうなクリスティーヌに、彼はほんの少し眉を顰めた。 「あら?嫌なの?私に負けるのが怖いのかしら。」 ふふ、と軽く笑ったクリスティーヌに、元来の負けず嫌いが不安を凌駕した。 「いいだろう。受けて立とう。」 決めてしまえば迷うことは無い。調子よく駒を動かしていく。 これは巧い。 「一体どこでチェスを学んだんだい?」 いくつもの戦略を組み立てては消し、次の手を計算するためにファントムの脳は全速力で回転していた。 「小さい頃はお父様と。オペラ座に来てからは…そうね。マダムや寄宿生達とよく遊んだわ。」 悩んでから駒を動かすファントムとは逆に、クリスティーヌは迷うことが無い。 「以外だったよ。お前がここまでの腕だとは思わなかった。」 「ふふふふ。結構やるでしょう?コーラスガールの中では負け知らずだったんだもの。」 チェスで勝負を仕掛けてきただけのことはあるようだ、とファントムも納得する。 しかし、と思った。 「そこでよかったのかい?」 張った罠を完成させ、もう逃げられないようにしてからファントムが問うた。 「え……?…あっ。」 気づいたときにはもう何処にも逃げ道無く追い詰められていた。 「もう!あとちょっとだったのにっ!」 悔しそうにキングの駒を倒し、敗北宣言をした。ぷぅと頬を膨らませて完全に拗ねた子供の様相を呈している。 「さて、私の勝ちだ。何でも言うことを聞いてくれるんだろう…?」 先ずはこっちへおいでと腕を伸ばせば、膨れたままのクリスティーヌがそれに従った。 「では聞かせてもらおうか。お前が勝ったら、私に何を強請るつもりだったんだい?」 聞かれたクリスティーヌは一瞬きょとんとした表情を浮かべた。それから再び膨れ。 「ずるいわ、そんなの。貴方のお願いを言ってくれなくちゃ。」 「だから言っているだろう?ほら。何でも聞くんじゃなかったのか?」 言うことは守らないと。 「わ、笑わないでよ…?」 困ったように眉尻を下げ、少しの恥ずかしさに頬を染めたクリスティーヌはファントムの耳元に唇を寄せた。 「キスして。抱きしめて。一晩中貴方の腕の中で眠りたいの…。」 至近距離であっても尚聞こえにくいほどの小ささで囁かれた彼女の願い。 「お前の望むままに。」 柔らかな低音が笑みを含んで囁くと。 |
【stamp】の九十九いずみ様から頂きました。
カウント2001Hitリクエスト、「お前が望むままに。」という台詞を使った映画版ファントム×クリスティーヌv いちゃいちゃです。た ま り ま せ ん ! 2人のチェス対戦も攻め方の違いが性格が出ていていいですよね! クリスの可愛い望みは男心をくすぐります。ファントムにしたら自分がお願いしたいくらいではないでしょうか?幸せ者め。 あぁ…しかし膝乗せ腰撫でですよ、マドモアゼル。ジェラルドファントム極まれり!と言う感じです。 全編萌えまくり。 九十九さん、素敵なSS、本当にありがとうございましたっ!! |
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